8月 02 2010
園頭広周師⑬
あるときこのような相談を園頭先生は受けました。
たまたま園頭先生が伝道先で泊まった大きな旅館の主人から「便秘が治る方法はないでしょうか」と聞かれます。その主人は便秘がひどいときは一ヶ月も続き、一ヶ月も便がでていないと、あくびをすると口からうんこのにおいがしてくるとのことでした。
よくよくその主人の話を聞いてみると、旅館の主人といっても、その人はある小学校の校長先生でした。その奥さんが旅館の娘でこの校長先生は養子で、学校から帰ると旅館の主人もやっているとのことでした。
外に出れば校長先生なのでその土地の名士なのですが、家の中では養子でしかも奥さんの方がその校長先生より何倍も収入が多いものですから、奥さんにはまったく頭が上がりません。その話を聞いた園頭先生は、またいつものように心の中で天に祈りました。すると便秘の原因は奥さんにあるという思いがあがってきました。
この園頭先生がされている心の中で聞くという方法は、何も園頭先生だけが特別にできるということではありません。昔から「大事なことは腹で考えろ」といわれていました。昔の人は、大事な決断をするときは頭で考えるのではなく、腹で考えて決断していました。頭で考えていると、いろいろな考えが浮かんできて迷ってしまうのですが、腹で考えていると一つの思いしか浮かんでこず、しかもその思いが正しいのでよい決断ができるのです。
腹で考えるとは意識を下の方に持っていって、じっくり考えていると良い考えが浮かぶという意味で、園頭先生がされていることと同じことです。これは腹(というか実際は胸ですが)には心があり、その心からでてくる思いが正しいことを昔の人は知っていたようで、それでこのように昔から言われていると思われます。園頭先生もされておりますが、このような考え方は正しいもので、大事な決断をするときは頭で考えるより、腹で考えた方がいいのです。心は天とつながっています。頭でごちゃごちゃ考えるより、静かにじっくり腹で考えた方が、正しい考えが浮かんでくるのです。
「ちょっと奥さんを呼んできてください」と園頭先生は言われました。
するとその主人は「私の便秘と家の嫁とどういう関係があるのですか」とびっくりしています。
その人が奥さんを呼んでくると、園頭先生は三十を少し過ぎたばかりでその人の奥さんは五十台です。しかも大きな旅館の娘ということもあり、プライドも高そうでかなりしっかりしたタイプでした。
「何であたしが旦那の便秘と関係あるのよ」ともいいたげに、少々ふてくされ気味に園頭先生の前にその奥さんは座られました。年も園頭先生が下であり、その奥さんがふてくされるのも無理はないといえば無理がありませんでした。
「ご主人の便秘の原因はあなたにあるのです」
いきなり園頭先生はそういわれました。
園頭先生は個人指導の結果を早く引き出そうとされる場合、こうした相手の意表をつく唐突な質問をされることがよくありました。しかし、それをされた旅館の奥さんの方は主人の便秘は主人の便秘、あたしには関係ないという表情がありありと見えました。
「あなたはご主人のことを、養子でもあるし貰う収入も自分の方が多いので、下男のようにしか考えていませんね」
そう園頭先生に言われると、その奥さんは真っ青になりました。自分が主人に対していつも思っていたことをズバリと言われたからです。
一瞬でその奥さんの態度が変わりました。それからは園頭先生の独壇場でした。「陰陽の調和」と「男女の役割」をその奥さんに懇々と説かれました。
養子というのは結婚の手続き上の問題であって、それには関係なく男女の役割は存在しています。校長先生であるこの主人にとっては、男勝りで何でも口を出す奥さんのあり方に、腹は立っても校長先生という立場上、派手な夫婦喧嘩をするわけにはいけません。町の名士でもあり何があっても我慢の一手で通すしかありませんでした。
ある宗教団体では「ケチケチして出すものを出さないから便秘になる」といっているところもありますが、そういう心もまったくないとは言いませんが、それよりも心がズッーと緊張しているほうが神経性の便秘症になるのです。旅行に出ると便秘になるという人が多いのも心が緊張しているからです。
その校長先生は学校では校長先生として緊張し、家に帰れば奥さんに頭が上がらず緊張し、緊張のしっぱなしということで、それでひどい便秘をされているのでした。
この校長先生の奥さんが女としての役割を心得て、主人を立てるということをされるようになると、この校長先生は便秘をされなくなりました。
その人の悩みによっては、原因はその人にあるというよりも、別の人にある場合も多いのです。
このように的確に悩みの原因を話される園頭先生に、相談を持ちかけてくる人々の間で「不治の病が治った」「家出中の娘が帰ってきた」「夫の酒乱が治った」などの奇跡が次々に起きたのです。



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