7月 21 2010
心の病②
そういうとその人は「えっ」という顔をしました。それはそうでしょう。うつ病があちこちの病院に行っても治らず、十年も苦しんでいたのですから。
しかし、十年も苦しんでいたうつ病が、少し考え方を変えただけで治るということはありません。そんなに簡単にうつ病が治れば苦労しません。すぐには治りませんが、私がなぜそんな言い方をしたかといえば、この人は十年もうつ病に苦しみあちこちの病院にいきました。しかし、それでも完全にうつ病が治ったわけではなくいまだに苦しんでいました。
私の事務所をのぞいたのも、もしかしたらうつ病が治るかもしれないという期待と、ちゃんとした病院に行っても治らないのに、こんなところで治るはずがないという、どうせダメだろうという思いが両方あったからです。というよりこんなところではどうせダメだろう、という思いの方が強かったと思います。
しかし、そのような思いがあってはダメなのです。
こんなところではどうせダメだろうという思いがあったのでは、こちらの話を真剣に聞きません。真剣に聞く気がなければ、それこそどんないい話をしてもダメなのです。だから私の話を真剣に聞くようにするために「あなたの病気は簡単に治ります」というような、この人が興味を持つ言い方をしたのです。
私が「あなたの病気は少し考え方を変えれば治ります」というと、その人の顔色が変わり「私の考えのどこを変えればいいのですか」と聞いてきました。
そこで私は少し間を置き「あなたのお父さんに感謝すればいいのです」と答えました。
それを聞いたとたんその人の顔に落胆の色が浮かびます。
それはそうでしょう。その人は自分の父親をずっと怨んできたのですから。父親のせいで自分はこのようになったと思っているのですから。
その人は「なぜ父に感謝しなければならないのですか、私は父のせいですべての財産をなくし借金までつくり、家族も出て行ってうつ病にまでなってしまったのです。なぜ、そんな父に感謝しなければならないのですか」と言います。
この人のような考えをするのが普通でしょうが、法を知ってしまうと、このような考え方がいかに間違っているのか分かります。そこで私は次のような質問をしました。
「あなたは今そこに座っていますが、それは誰のおかげですか」
何か禅問答のような質問ですが、その人はよく質問の趣旨が分からなかったようで「はぁ」という顔をされました。
そこで私は「あなたが今そこに座っていられるのは、一体誰のおかげなのですか」ともう一度聞きました。
今度は質問の意味が分かったようで、少し考えてから「それは母のおかげです」とその人は答えました。「それはおかしいですね、あなたのお母さん一人であなたを育てたわけではないでしょう。あなたのお父さんが、お母さんに生活費を渡して一緒にあなたを育てたからあなたはそうして育ったのでしょう」と私が言うと「それは違います。私は小さいときに父に叱られてたたかれ、それでひっくり返って柱に頭をぶつけ、頭から血が出てから父が怖くなり、それ以来、父には近づかなかったのです」と言います。
この人はどうしても父親を悪者にしたいようでした。
そこで私は続けて「小さいときたたかれたと言いますが、私も小さいときは悪いことをしてよく親にたたかれました。私たちの小さいときはそれが普通だったでしょう。それとも最近のバカ親のように、自分の子供が死ぬまでお父さんはあなたをたたき続けたのですか」
私がそう言うと、その人はもう何も言えなくなり下を向いてしまいました。
「あなたはお父さんのせいで、全財産をなくし借金までつくったといわれますが、お父さんがあなたを育てるのに一体いくらかかったと思いますか。あなたはよい大学にも行かれているのでしょう。それにお金だけの問題ではなく、子供一人育てるにもどれほどの愛情が必要なのかお分かりでしょう。あなたは先ほどから、お父さんはあなたに愛情のかけらもなかったような言い方をしておりますが、愛がなくて子供がちゃんと育てられますか。あなたも娘さんが一人いられるのならそれは分かるでしょう」
私は話を続けました。



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